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広島地方裁判所 昭和34年(行)7号 判決 1960年8月01日

原告 馬林和夫

被告 広島県公安委員会

主文

被告が原告に対し、昭和三四年九月二六日付指令第六三〇二号をもつてなした自動車運転免許取消処分を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一、当事者の求める裁判

原告訴訟代理人は、

主文同旨の判決を、

被告訴訟代理人は、

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を

求めた。

第二、請求の原因

一、原告は、自動車運転免許(大型第二種第四八、九三七号)を受け、タクシーの運転手として自動車運転の業務に従事しているものであるが、被告は昭和三四年九月二六日付指令第六、三〇二号をもつて、道路交通取締法第九条第五項の規定により、「原告が昭和三四年六月二七日二一時四分、広島市紙屋町と相生橋間において、小型四輪タクシー運転中、法令違反を為した。」という理由で、原告の右運転免許を取消す処分をした。そこで原告は同年同月三〇日、被告に対し、異議の申立をしたが、被告は同年一〇月五日、右申立を却下した。

二、しかしながら、右運転免許取消処分には次のような違法がある。

(一)  自動車運転免許取消処分は一定の事由がある場合に、行政権によつて一方的に行われるものであるから、その処分の理由は特定するよう具体的に示されなければならない。しかるに被告が原告に対して交付した自動車運転免許取消処分を内容とする行政処分通知書には、その根拠として道路交通取締法第九条第五項をあげ、違反事実として、「昭和三四年六月二七日二一時四分広島市紙屋町―相生橋における小四タクシーを運転中の法令違反」とのみ記載し、具体的にどのような法令違反をしたか、又それが運転免許取消処分を相当とする程重大な違反かどうかを明らかにしていない。よつて右運転免許取消処分にはその理由を示さない違法がある。

(二)  原告は、右処分通知書に原告の法令違反をした日時として掲げられているところから推して、右運転免許取消処分は、原告が昭和三四年六月二七日午後九時四分頃、小型四輪タクシーを運転中、広島市紙屋町と相生橋間道路上のいわゆる転回禁止区域内でなした転回違反行為についてなされたものであると考えるのである。しかるところ、運転免許取消事由の具体的基準を定めている昭和二八年一一月二〇日総理府令第七五号第三条第四条によれば、転回違反はそのいずれの条項にも該当しない。よつて右運転免許取消処分には法令の根拠を欠く違法がある。

(三)  仮りに、原告の行為が運転免許取消の事由に該当するとしても、右運転免許取消処分はあまりにも苛酷であり行政処分の比例原則に反し著るしく裁量を誤つた違法がある。

三、よつて、右運転免許取消処分の取消を求める。

第三、被告の答弁及び主張

一、請求の原因中、第一項は認める。第二項のうち被告の本件行政処分通知書に処分に該当する事実の概要として原告主張のような記載があることは認めるが、その余は争う。

二、原告は広島タクシー株式会社に雇傭され、同会社所有の乗用小型自動四輪車を運転していたものであるがが、昭和三四年六月二七日午後九時四分頃、道路交通取締法第一二条第二項、昭和三三年一一月一四日広島県公安委員会告示第八号により終日自動車の転回禁止区域に指定されている広島市山口町交叉点から同市猿楽町相生橋東詰に至る道路を西方に向つて進行中、同市猿楽町三共株式会社広島出張所前で突然右(東方)に転回しようとしたので、その附近で交通指導にあたつていた広島西警察署勤務宮田巡査に「ここは転回禁止になつているから転回してはならない」旨警告指示され、止むなく五米位後退した。ところが原告はすぐその場から更に右に転回して東方に向きをかえて停車し客を乗せようとして左後方のドアーを開いていたので、同巡査は直ちにその場へ馳せ寄り、左側前方のドアの窓から上半身を車内に入れ、更に右手を差入れてて、「先程の注意指示がわからないのか、そこでは転回禁止となつていることは知つているでしよう。指示に従わないのであれば運転免許証を見せてくれ」といつて自動車運転免許証の提示を求めたところ、原告は同巡査が上半身を車内に入れているのでそのまま発車させると同巡査の生命、身体に危険を及ぼすことを充分認識しながら、逃走するためやにわに発車し、同巡査を車体外にぶらさげたまま走り出したが、交通が輻そうしていたので約五〇米東進して停車するのやむなきにいたつたのである。

三、原告はこの外、昭和三三年一一月二一日午前一一時頃、広島市紙屋町交叉点から五米以内(道路交通取締法施行令第三〇条第二号により駐車禁止区域となつている)に乗用小型自動四輪車を駐車させていたため広島西警察署勤務川崎巡査から運転免許証の提示を求められたが、その指示に従わず逃走しようとしたので、同巡査がこれを制止しようとして車体に手をかけた際、急に発車して同巡査を窓にぶらさげたまま北方に約一〇〇米逃走したことがあり、駐車違反の理由で同年一二月二〇日、被告委員会から一五日間の運転免許停止処分を受け、右処分の期間は同三四年二月一九日満了したものである。そのほか、原告は同三〇年七月以降交通法令違反で二〇回刑事処分を受け、又同三二年七月以降駐車違反、禁止区域通行違反、速度違反等で九回運転免許停止処分を受けている。

四、そこで、被告は原告の右昭和三四年六月二七日の転回違反が、右三記載の同三三年一二月二〇日の運転免許停止処分の期間満了の日である同三四年二月一九日から起算して一年以内に更に運転免許の停止処分を受ける場合に該当する外、原告が取締警察官を車体外にぶらさげたまま疾走する等情状により処分を加重する必要がある場合にも該当するものとして、昭和三四年九月二六日道路交通取締法第九条第六項にもとずく聴聞会を開いたうえ、本件運転免許取消処分を行つたものである。

五、(一) 原告は、本件運転免許取消処分には理由を附さない違法があると主張するが、本件行政処分通知書においては法令違反の日時場所を特定記載しているのであるから、以上のような本件行政処分の経過に照し、右通知書の記載により当該違反事実が前記転回違反であることは当然原告にも了解できるものといわなければならない。従つて、右のような記載でも運転免許取消処分に附すべき理由としては充分であつて何ら違法ではない。

(二) 次に、原告は法令上転回禁止違反を理由としては運転免許取消処分をなしえないのであるから、本件処分は違法であると主張するが、被告は上記処分の経過により明かなように原告の昭和三四年六月二七日の転回違反が道路交通取締法第九条第五項、同法施行令第五九条第一項第一号第三号、昭和二八年一一月二〇日総理府令第七五号第五条第八条第一項第三項第一号に該当するものと認め運転免許取消処分をしたものであつて、原告の右処分が法令の根拠にもとずかないという非難は当らない。

六、以上のとおり本件運転免許取消処分には何等違法な点は存しないから本訴請求は失当である。

第四、被告の主張に対する原告の反駁

原告の昭和三四年六月二七日午後九時四分頃における自動車運転状況は次のとおりである。すなわち、当夜の広島市民球場におけるナイターが右時刻頃終了したので、原告はナイター帰りの客を拾うため自動車の転回禁止区域である紙屋町交叉点と相生橋東詰の間で、相生橋に向つて右廻りに転回しようとしたところ、警察官に注意され停止を命ぜられたので一旦停車した。ところが当時ナイター帰りの人々と多数の自動車等の往来で路上は混雑しておりいつまでもその場に停車していることはできないと感じられたので止むなく又右廻りを続けて運行した。その際原告は警察官の「待て」という声にはじめて警察官の一人がドアーにつかまつているのに気付き急ぎ停車したが約三〇米進んだところで停車し、幸に事なきを得たものである。以上のような次第であるから、原告が警察官を車体外にぶらさげたまま逃走しようとした事実は存しない。

第五、証拠<省略>

理由

一、原告が、自動車運転免許(大型第二種第四八九三七号)を受け、タクシー運転手として自動車運転の業務に従事していたものであること、被告が昭和三四年九月二六日附指令第六三〇二号行政処分通知書を原告に交付して原告の右運転免許を取り消す処分をしたこと、右通知書には道路交通取締法第九条第五項の規定により「原告が昭和三四年六月二七日二一時四分広島市紙屋町と相生橋間において小型四輪タクシー運転中法令違反をなした」ことを理由に右処分をなす旨記載してあること、これに対し原告は同年九月三〇日被告に異議の申立をしたが、被告は同年一〇月五日右申立を却下したことはいずれも当事者間に争がない。

二、まず、原告の右法令違反の具体的状況について審究する。昭和三四年六月二七日午後九時四分頃広島市内広島市民球場におけるナイター終了後の同球場附近の混雑を整理するため広島西警察署巡査宮田忠において同市猿楽町三共株式会社広島出張所前の電車通りで交通指導にあたつていたところ、原告がその勤務先である広島タクシー株式会社の小型乗用四輪自動車(いわゆるルノー)を運転して同市内紙屋町交点叉から相生橋の方向に西進し右三共株式会社出張所前附近で客を拾うため右廻りに転回しようとして道路中央部まで進出したこと、しかるところ、右地点は被告委員会告示により終日諸車の転回禁止区域として指定されている同市山口町交叉点から相生橋東詰にいたる道路の一部であつたから、宮田巡査は原告の右行為を現認してただちにその場にいたり、此処は転回禁止区域になつているから転回してはならない旨注意し原告の転回を差し止めたこと、すると原告は一たんは同巡査の指示に従いその場から四、五メートル後退したが其処から又もや転回を開始し今度は転回を完了したこと、以上の事実は原告において明かに争わないからこれを自白したものとみなされる。次に、被告は「宮田巡査において原告が右転回完了後停車して客を拾おうとしていたので再び原告の傍にいたりさきの注意を無視したことを難詰し運転免許証の提示を求めたところ、原告はその場から逃走する目的で同巡査が左側前部ドアーの窓から上半身を車内に入れているのもかまわず急激に発車し、東方に向つて猿楽町第一産業株式会社前まで同巡査を車体外にぶら下げたまま疾走した」と主張し、証人宮田忠・同川崎和彦の各証言中には被告の右主張に副う部分が存するけれども、右は後記証拠に対比しにわかに採用しがたく、他には被告の主張を認めるに足りる証拠はない。かえつて、証人渡島常也・同山下正好・同平山毅の各証言によれば原告は転回完了後宮田巡査から先の指示を無視したことを叱責され免許証の提示を求められるや、これに従わず発車したこと、そのため同巡査において車体左側ドアーに手を掛けたまま車体にそい走りながら原告を制止したので原告は右第一産業株式会社前において停車のうえ免許証を提出するのやむなきにいたつたが、同巡査を車体外にぶら下げて疾走する等同人に危険を及ぼすような行為まではしていないことが認められる。

三、つぎに原告がこれまでどのような行政処分をうけているかについて審究する。原告が昭和三三年一一月二一日午前一一時頃広島市紙屋町交叉点から五メートル以内の駐車禁止区域にタクシーを駐車させていたため広島西警察署川崎巡査から免許証の提示を求められたが、これに従わず逃走しようとしたので同巡査がこれを制止しようとして車体に手を掛けた際急に発車して同巡査を窓にぶらさげたまま北方に約一〇〇メートル逃走したことがあり駐車違反の理由で同年一二月二〇日、被告委員会から一五日間の運転免許停止処分を受け右処分の期間が同三四年二月一九日満了したこと、原告は昭和三〇年七月以降交通法令違反で二〇回刑事処分を受け又同三二年七月以降駐車違反、禁止区域通行違反、速度違反等で九回にわたり運転免許停止処分を受けていることはこれ又原告において明かに争わないところである。

四、そこで、以下原告主張の本件取消処分の違反原因につき順次判断を加えることとする。

(一)  まず、原告は、前記行政処分通知書の記載の程度では、運転免許取消処分の理由となつた事実の表示としては不充分で、従つて本件処分には理由を附さない違法があると主張する。

しかしながら、都道府県公安委員会が道路交通取締法の規定に基き運転免許の停止または取消の処分をなす場合において、いかなる方式によるべきかについては同法及びこれに基く法令上何らの定も存しないのであるから処分の理由となつた事実の摘示としては被処分者において当該処分の通知書によりいかなる事案につき処分がなされたものであるかを了知しうる程度に記載すれば充分であるというべきであつて、進んで詳細に具体的事実を開示し、あるいは当該処分をなしたことが事案に照し相当であることを首肯せしめるに足りる理由附けをなすことまでは要求されていないものと解するのが相当である。そして、前記認定の本件行政処分通知書の記載によれば、本件取消処分の事由たる違反行為がその日時場所により明確に特定せられ原告をしていかなる具体的事実により処分せられたものであるかを了解せしめるに充分であるといわなければならない。いわんや、道路交通取締法第九条第六項、第七項、同法施行令第六一条の二第一項によれば、公安委員会が運転免許の取消又は停止をなすにつき公開による聴問を行うべきときは、被処分者に対し処分をしようとする事由ならびに聴問の期日場所等をその一週間前までに文書を交付し又は郵送によつて通知すべく、聴問に際しては被処分者又はその代理人は当該事案について意見を述べ、証拠を提出することができるものと定められているところ、本件取消処分に先だち、昭和三四年九月二六日聴問が開かれ、右期日に原告が出頭したことは証人竹本勉の証言により明白である。(従つて、特段の主張・立証なき限り、原告に対し聴問の期日の通知とともに処分をしようとする事由が通知されたものと推認すべきである。)してみれば、原告としては、右聴問の期日の通知を受け、聴問当日に出頭したことにより本件処分の理由たる事案を詳細に了知しえたものといわなければならない。従つて、本件通知書により原告においていかなる事由により処分がなされたかを了知しえないということは到底ありえないといわざるをえない。しからば、本件処分通知書において理由を示さない違法があるとの非難は失当で原告の主張は理由がない。

(二)  次に、原告は、運転免許取消の基準を定めた昭和二八年一一月二〇日総理府令第七五号第三条、第四条によれば、転回違反は免許取消の事由とされていないことが明かであるところ、本件係争の取消処分は、まさに原告のした転回違反をその理由とするものであるから、右総理府令の規定に違反するものであつて違法であると主張する。

しかしながら、右総理府令によれば、運転免許の取消をなしうるのは、右第三条、第四条の規定する事由ある場合にのみ限られるものではなく、同総理府令第八条の規定により明かであるように免許の停止の処分をなすべき場合においてその加重として取消の処分にいたり得る場合が存するのである。そして、原告の本件転回違反は、右総理府令第五条第二号・別表第二により五日以上一五日以下の免許の停止の処分をなすべき事由に該当し、かつ前記三に認定したところを考え合せると右は駐車違反を理由とする昭和三三年一二月二〇日の免許停止処分の期間満了の日である同三四年二月一九日から起算して一年以内に更に免許の停止の処分を受けることとなる場合であるから、右総理府令第八条第三項第一号に該当し、免許取消処分にいたりうること明かである。もつとも、被告は、原告が右宮田巡査を車体外にぶら下げて疾走した事実を認定し、これをもつて処分を加重する必要がある情状に加えているのであるが、当裁判所は右事実を認めないことは前記のとおりである。しかしながら、たとえ右事実が認められなくても本件の場合において抽象的には免許取消の処分にいたりうることは右総理府令第八条第一項の立言自体により明かである。しからば、本件取消処分が右総理府令の規定に準拠しないから違法であるとの原告の主張は失当であるといわなければならない。

(三)  更に、原告は、本件転回違反が、免許取消をなし得る事由にあたるとしても、免許取消処分はあまりにも苛酷であり、行政処分の比例原則に反し裁量をあやまつた違法があると主張する。

思うに前掲総理府令第八条第一項の規定によれば、免許の停止の処分の期間を満了した日から起算して一年以内に更に免許の停止の処分を受けることになるものであるときその他情状により処分を加重する必要があると認めるときは同令別表第一又は第二に定める期間をこえて免許の停止をなし又は取消の処分をすることができるものとされているところ、免許の停止・取消処分は、一面において道路における危険防止その他交通の安全を図る行政目的に照して運用されるのではあるが、他面においては私人から自動車等を運転する資格を剥奪し又は一時的に停止するという権利侵害的性格を具有している(多くの場合において運転者からその職業ないし停止期間内の稼働力を奪う結果となること多言を要しない。)ことも否めないところであるから、かかる面を考慮するときは、公安委員会において右処分をするにつきいかなる事実が右規定にいう情状にあたるかを決すること(ただし、同規定自体が、「免許の停止の処分期間を満了した日から起算して一年以内に更に免許の停止処分を受けることになるものであるとき」を右情状の例として挙げているわけであるが。)およびいかなる処分が適当な釣り合を保つた妥当なものであるかを決することはいわゆる自由裁量にまかされたものではなくして法規裁量にぞくするものといわなければならないのである。

いま本件事案についてみるに、被告において免許取消処分をなすにつき情状として認定考慮したのは、(イ)本件転回違反が前年の駐車違反による免許停止処分の期間満了から一年以内に更に免許停止処分をうけることになる場合であること、(ロ)宮田巡査を車体外にぶらさげて疾走したこと、(ハ)従前相当回数にわたり交通法令に違反し司法処分・行政処分をうけていること、(ニ)本件転回違反の際雑踏中にもかかわらず取締警察官に対し反抗的態度に出、再三その命令に従わなかつたことの四点であることは、その主張から明白である。そして、右はいずれも本件転回違反につき処分を加重すべき情状に該当するものと認められるからこれを考慮に入れたことは正当といはねばならない。尤も(ロ)の点のみは前記のように事実の証明がないから、これを除外して考えるより外はない。

そこで、右(イ)(ハ)(ニ)の情状たる事実をしんしやくし、原告の転回違反に対し本件取消処分が適当な比例を保つているかどうかを考えてみるに、まず、(イ)については、かかる場合に該当するからといつても、右総理府令第三条第一項第八号の規定との対照上も過去一年内に一回の停止処分があることによりただちに取消処分に飛躍することには大いに疑問があり、(ハ)については成立に争ない乙第一、二号証によつてその違反事実の性質・態様を検討してみるにいずれも比較的軽微な事犯であつて今後における原告の自動車運転が交通の安全に害をなすこと著しきものがあるとは考えられず、又前記渡島、平山、山下証人等の各証言によるとタクシー運転手として現在原告の程度の違反歴のある者はさして稀とはいえないことが認められ、さらに(ニ)については原告の当夜の行動は遵法精神に欠け遺憾なものであることを窺わしめるに足りるが、さりとてこれを単独で又は(イ)(ハ)の事実と総合しても本件取消処分を首肯せしめるに足りるほど悪質重大な情状であるとまではいいがたい。(なお、ここに、証人竹本勉の証言によつて認められるように、被告委員会においても従来転回違反を理由として免許取消処分をしたことはないとの事実を合せ考えるべきである。)

このように見てくると、本件において認められる原告の転回違反およびその情状を理由としては、原告の運転免許を取り消すには足らないというべきであり、従つて本件免許取消処分は右の点において違法であると論結せざるを得ない。原告の主張は理由がある。

五、よつて、本件運転免許取消処分の取消を求める本訴請求を相当として認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 大賀遼作 宮本聖司 長谷喜仁)

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